タレントマネジメントとは?

タレントマネジメントとは従業員が持つスキルや経験値などの情報を一元管理して、人員の育成や配置を戦略的に行うマネジメント手法のことです。もともとは1990年代のアメリカで提唱されたと言われており、日本では2010年頃より注目を集めるようになりました。
なおタレントマネジメントは言葉の通り、「タレント=従業員全員」が対象で、部門や部署の垣根を越えて人材情報をデータ化・セグメント化します。タレントマネジメントを導入する主な目的は、次の通りです。

  • 適材適所の人員配置により生産性を向上させる
  • 人材が持つスキルや経験を可視化することで人材育成を促進させる
  • 情報をデータで一元管理することで、ペーパーレス化を促進しDX化を加速させる
  • 上記すべてを達成することで働き方改革や戦略的組織への変革を推進する

タレントマネジメントが注目を集めている背景

ここでは日本においてタレントマネジメントが注目を集めている背景を解説します。

少子高齢化が進んでいる

内閣府が発表している「令和4年版 高齢社会白書(全体版)」によれば、令和3年10月1日時点における日本の総人口は1億2,550万人、そのうち65歳以上の高齢者が占める割合は28.9%に上ります。また、日本の総人口や出生数が減少の一途をたどっていることはすでにさまざまなメディアで取り上げられています。少子高齢化によって働く従業員も減少しており、多くの企業が人材確保に深刻な課題を抱えているのが現状です。
タレントマネジメントを活用すれば、今ある人材のスキルや経験を可視化することで人的リソースを最大化することが可能です。つまり、少子高齢化による人手不足解消の一端を担うべく、タレントマネジメントが注目を浴びているというわけです。

終身雇用制度が崩壊しつつある

従来の日本においては新卒一括採用や終身雇用制を導入する企業が多く、一社で長く働ける人材育成に重きを置いてきました。しかし現在は、同じ企業で長く働くのではなく「働き方を選べる時代」へと変化しています。そのため、以前にも増して人材の流動性は高まり、人材育成に時間を割けないのが現状です。タレントマネジメントを活用すれば、従業員のスキルや経験が可視化されることにより、必要な教育を瞬時に把握でき、戦略的な人材育成を進められます。

働き方や価値観の多様化が進んでいる

現在、コロナ禍で急速に普及したリモートワークや、一部の企業が導入する選択的週休3日制など、ワークライフバランスを意識した働き方が浸透してきました。株式会社SHIBUYA109エンタテイメントが運営する若者マーケティング機関「SHIBUYA109 lab.」の実施した調査に興味深い結果があります。「Z世代の仕事に関する意識調査」によれば、実に31.9%の回答者がデジタル化が遅れている職場にストレスを感じていると回答したそうです。
このように、私たちの働き方や仕事への価値観はスピーディーに変化しています。従業員が理想とする働き方を実現したり、価値観を尊重したりするためには、従業員の生産性を向上させる取り組みが欠かせません。
タレントマネジメントを導入すれば、労働時間の可視化による残業の制限や人材スキルに応じた最適な人員配置などにより、生産性向上に取り組めます。また、書類情報をデータで一元管理できるため、これまで煩雑だった手作業を削減できるうえ、デジタル化も促進できます。

ビジネスのグローバル化が進んでいる

物価高騰や国内における経済の低迷から、グローバルで活路を見いだす企業も増えています。しかし、グローバルで活躍するためには市場の変化に柔軟に対応するため、従業員の特性理解や能力を最大限に発揮できる仕組みづくりが必要です。まさにタレントマネジメントが得意とする領域でもあります。

総務の課題解決にタレントマネジメントが効果的な理由

タレントマネジメントが総務の課題解決に効果的な理由を3つの観点から解説します。

適材適所の人員配置が可能となる

タレントマネジメントを活用すれば、従業員の経歴・スキルのみならず担当プロジェクトまで可視化できます。そのため業務ごとに適材適所の人員配置が可能となり、アサインされた人材価値も高められます。特に総務の仕事は多岐にわたるため、人材情報を基に業務との適正を判断することが重要です。「労務業務に長けた人材」「人事業務に長けた人材」などそれぞれが活躍できる環境に身を置くことで、総務部全体のモチベーションアップにもつながるでしょう。

離職率の低下につながる

タレントマネジメントによって適材適所で業務を遂行できるようになれば、従業員の意欲を引き出せるでしょう。また従業員の経歴を基に適した部門・部署で働いてもらえるため、会社に対する不満もたまりにくくなります。結果として、従業員が働きやすい環境を構築でき離職率低下にもつながります。

生産性の向上が期待できる

先にも述べた通りタレントマネジメントにより、従業員を経歴やスキルに基づいて最適なプロジェクトへアサインできます。その結果、自身の得意分野で働けるため生産性の向上が期待できるのです。また、自身に不足しているスキルがデータ上で明らかになることで、成長意欲の醸成にも期待できるでしょう。タレントマネジメントの可視化機能によって、自身に足りないスキルを補完できれば従業員一人ひとりの生産性がアップすることは言うまでもありません。

総務の課題解決に期待!タレントマネジメントシステムでできること

従業員が持つスキルや経験値などの情報を一元管理し、戦略的な人員配置や育成を進めるマネジメント手法がタレントマネジメントでした。一方で、タレントマネジメントシステムとは、タレントマネジメントを導入するために必要なソフトウェアやシステムのことを指しています。タレントマネジメントシステムには、社内サーバーにシステムを構築する「オンプレミス型」と、クラウド上でシステムを利用する「クラウド型」があります。最近は、インターネット環境があれば出先で情報を閲覧できるクラウド型が主流です。ここでは、タレントマネジメントシステムでできることを4つ解説します。

従業員の情報管理

従業員の顔写真・入社年月日・担当プロジェクト・経歴・雇用形態などの情報を管理できます。これにより管理職はプロジェクトに必要なメンバーを確保したり、従業員であれば他部署との連携を強化したり、戦略的人事活用にも役立てられます。また総務・労務業務で把握すべき従業員ごとの有給休暇の有無、マイナンバー提出状況なども管理画面から容易にアクセス可能です。

スキルの管理

繰り返しになりますが、タレントマネジメントシステムでは従業員ごとのスキルも管理できます。従業員の保有スキルを把握することで、部署やプロジェクトごとに最適な人材をアサインできるだけでなく、不足しているスキルを可視化し自己成長へとつなげられます。結果として従業員のスキルが底上げされ、企業全体の生産性向上にも貢献するでしょう。さらに、スキルを可視化することで、自社に不足している人材を補うための採用業務にもシームレスに連携できます。

目標の管理

タレントマネジメントシステムでは、自社の経営戦略や従業員のキャリアプランといった目標を設定すると、その達成率を可視化できる機能があります。経営戦略に基づいて自社が置かれている現在地を確認すれば、今後とるべき方向が見えてくるでしょう。また、従業員のキャリアプランが可視化され達成率を把握できれば、仕事へのモチベーションアップにつながります。さらにキャリアプランの進捗から従業員の現在地を把握することで、人事評価も属人的にならずに済むでしょう。

従業員の不満や問題の把握

総務は業務内容が広すぎたり、上長から適切な評価が得られなかったりと、仕事に対する課題が多く業務に不満を感じている従業員も多いはずです。タレントマネジメントシステムには、アンケートの作成・収集機能が付いているタイプもあり、活用することで従業員の不満や悩み、課題が明確になります。不満や悩みを把握できれば、働きやすい職場にするにはどうすればいいのか、職場環境の改善施策にも役立てられるでしょう。

タレントマネジメントシステムの選び方

タレントマネジメントを行うにあたって、必要不可欠な存在であるタレントマネジメントシステム。では自社に適したシステムを選ぶにはどのような観点を重視すればよいのでしょうか。ここでは、選び方のポイントを3つの観点からご紹介します。

導入目的を達成できるか

タレントマネジメントシステムを導入する目的は、以下のように企業によって異なります。
「従業員のスキルや経歴を可視化して、適材適所の人員配置を達成したい」
「総務部の業務が煩雑であり担当業務を見える化したい」
「自社に不足している人材の採用を強化したい」
このように、まずはタレントマネジメントシステムの導入目的を明確にしましょう。自社の目的にそぐわないシステムを導入してしまうと、期待した効果が得られないだけでなく、費用も無駄になります。導入目的を明確にする際は、経営層だけの考えだけでなく、各部門の管理者や従業員にまで掘り下げて、現場レベルでの課題を把握しなければなりません。現場がどのような課題を抱えて困っているのかを洗い出すことで、経営レベル・現場レベルの目的が見えてきます。それを踏まえて、自社に最適な機能が備わっているかを判断しましょう。

安心して利用できるか

タレントマネジメントシステムでは、従業員の個人情報を扱う観点から、セキュリティ対策の充実が欠かせません。部署や役職ごとにアクセス権限を付与できるか、またはログイン時の2段階認証は完備されているか、特定のIPアドレスを除外できるかなど慎重に確認しましょう。さらには保存データのバックアップ機能や、出先で端末を紛失した場合の機密情報の流出防止対策なども合わせて確認してみてください。また、安心して利用するという意味で、初期設定や運用のアドバイスなどサポート体制も重要です。

自社に合わせたカスタマイズができるか

タレントマネジメントシステムは、従業員の情報を管理するのが最終的な目的ではありません。システムで蓄積した情報を分析して、企業経営や戦略的人材マネジメントに活用する必要があります。だからこそ、企業に合わせて使えるように一定の柔軟性や拡張性があると便利です。「豊富なテンプレートが用意されている」「社内の配置転換に合わせて項目を変更できる」など、どの程度カスタマイズできるか確認してみてください。また、項目をカスタマイズすることによって追加費用が発生しないかも確認しておくとよいでしょう。

まとめ|総務の課題を解決するならタレントマネジメントを検討しよう

企業によっても異なりますが総務は、従業員の勤怠管理・人事評価・給与計算・入退社の手続きなど、幅広い業務を担当しなければなりません。それだけに目先のタスクで精一杯となり、「業務効率化が一向に進まない」「レガシーシステムから脱却できない」などの課題を抱えています。これらの課題を解決するためには、従業員のスキルや経歴、稼働状況をタレントマネジメントシステムで把握することが重要です。一人の従業員にリソースが集中していないか、煩雑な手続きによって工数が増大していないかなど今一度見直してみましょう。