給与計算とは?

給与計算とは、読んで字のごとく、労働契約を結ぶ従業員の給与額を計算する業務のことです。給与を計算するためには、従業員ごとの勤怠情報を確認するとともに、正社員・派遣社員・アルバイトなど人によって異なる給与体系も把握しなければなりません。
また、社会保険料・住民税・所得税など税金の計算も必要で、労働者の代わりに会社が税を徴収し、納付まで行なう必要があります。従業員との労働契約を遵守するためにも、ミスが許されない責任のある業務だと言えるでしょう。労務・税務など幅広い知識が必要で、誰にでもできる業務ではありません。

給与計算はどの職種が担当する?関係職種について

給与計算業務を担う部署は企業によって異なります。人的リソースを割けない中小企業の場合は、総務部が統括したり、人事部や経理部が手分けして行ったりとさまざまです。その上で関係職種の役割について簡潔にご説明します。

経理部

経理部は主に企業のお金にまつわる業務全般を担当しており、以下4つが基本業務です。

  • 出納業務
  • 記帳業務
  • 集計業務
  • 給与計算業務

取引における現金や預金の入出金の管理、残高の把握が出納業務です。日々、現金が動くことによって、伝票・精算書・領収書の作成が必要で、現金出納帳への記帳業務も行います。また取引内容を日付順に整理し、記録する「仕訳帳」や、仕訳帳を基に、勘定科目別に借方・貸方へ記入する「総勘定元帳」などの帳簿管理も経理部の業務です。なお、経理部がある企業の場合は、基本的に給与計算業務も担当します。

総務部

総務部の役割は企業によって異なるものの、以下のように労務業務全般を担うことが多いでしょう。

  • 勤務表の作成
  • 有給休暇の管理
  • 社会保険の加入手続き
  • 年末調整の手続き
  • 福利厚生の見直しや設計

また、総務部は人事や経理部門など各部門の管理業務を担うケースもあり、その役割は時代とともに変化しつつあります。そのため、給与計算を行うときに欠かせない勤怠管理を任せられているケースもあるでしょう。

人事部

人事部は、「ヒト・モノ・カネ」など代表的な経営資源のなかで「ヒト」を管理する部署です。例えば、採用に関する人員計画の策定や求人サイトへ掲載する募集要項の作成、社内の配置転換、人材育成方針の検討などその役割は多岐にわたります。また、給与計算に必要な基本給や報酬額を決定する人事規定などを担うのも特徴です。

給与計算の一般的な流れ

給与計算を担う各職種の役割を理解できたところで、給与計算業務の基本的な流れを整理します。

勤怠を締めて労働時間を計算する

従業員ごとのタイムカードの打刻を確認し勤怠を締めて、労働時間を計算します。雇用契約で定められた基本給や残業の有無、深夜手当や休日出勤手当なども含めて計算しなければなりません。また、正社員・派遣社員・アルバイトなど雇用形態に応じて給与体系も異なるため注意が必要です。

【勤怠情報の管理に必要な項目】

  • 出勤日数
  • 有給休暇
  • 遅刻や早退
  • 労働時間
  • 残業時間
  • 休日出勤
  • 基本給
  • 役職手当
  • 残業手当
  • 住宅手当
  • 家族手当 など

総支給額を計算する

労働時間の計算や各種手当などをまとめたら、総支給額を計算します。例えば休日出勤手当を計算する際は、仮に月給制の従業員だった場合、1年間の総所得労働時間に対し、1時間あたりの平均賃金を算出し計算しなければなりません。また休日手当は従業員の通常賃金に対して、35%の割増賃金率で支払うよう労働基準法で定められています。以下に具体的なケースを掲載しましたので、参考にしてみてください。

  • 1日の実働時間:8時間
  • 年間の所定休日数:120日
  • 休日手当の割増率:35%
  • 月給:20万円
【計算式】
365日 – 120日(年間の所定休日数) = 245日(年間の労働日数)
245日(年間の労働日数) × 8時間(実働時間) ÷ 12ヵ月 = 163時間(1ヵ月の平均労働時間)
20万円(月給) ÷ 163時間(1ヵ月の平均労働時間) = 1,227円(1時間あたりの平均賃金)
あとは、1時間あたりの平均賃金に対して、割増率を計算してあげれば問題ありません。
1,227円(1時間あたりの平均賃金) × 1.35(割増)= 1,656円(残業1時間あたりの賃金)
仮に休日出勤の実働時間が8時間だとすると、「1,656円 × 8時間(実働時間) = 13,248円」がその日の休日手当です。

このように給与計算は、残業時間や休日出勤なども含めて、総支給額を計算する必要があるため複雑でミスが起こりやすい傾向にあります。
参考:労働基準法 第三十七条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)|e-GOV

各種社会保険料やそのほかの税金を計算する

総支給額を計算できたら、次に社会保険料や税金などの控除を計算します。雇用保険料や健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料などを含めて計算する必要があります。税金に関しては、所得税や住民税などが対象です。所得税については毎月おおよその額を算出し、税務署へ納付します。
なお正確な所得税額は年末調整で計算することで、従業員に還付または追加徴収するのが特徴です。住民税に関しては、各市町村から5月に納付書が届きますので、そこに記載された額を従業員の給与から毎月差し引き、納付します。

差引支給額を計算する

計算した総支給額から控除額を差し引くことで、手取り額を決定します。なお計算ミスがあると、重大な労務ミスにつながるため慎重な確認が必要です。

事務処理や給与の振込手続きを行う

給与明細の作成や労働基準法によって管理が義務付けられている賃金台帳への記載など、事務処理を進めます。賃金台帳とは、労働者の名前・性別・賃金の計算期間・労働日数・給与支払状況を記した書類のことで、作成と保存が義務付けられている法定帳簿です。事務処理が完了した段階で、確定した給与を決められた給与支払日に振り込みます。

社会保険料や税金を納める

そのほか、社会保険料や税金を納付すれば一連の給与計算業務が完了です。

総務業務における給与計算で起こりがちなミスとその要因

ここでは給与計算業務で起こりがちなミスについて解説し、その要因を洗い出していきます。代表的なケアレスミスは、以下の通りです。

  • 勤怠の打刻ミスや申請漏れ
  • 雇用形態の改定忘れ
  • ソフト間の転記・集計ミス
  • 明細書の渡し忘れ

紙と目視で確認しているから

ペーパーレス化が普及しておらず、旧態依然のまま紙ベースで給与計算をしている場合、残業時間や雇用形態の把握などを、都度目視で確認・計算しなければなりません。管理する従業員が多いほど、担当者の負担も増加し、ケアレスミスが発生しやすくなります。特に休日手当や割増賃金の計算は煩雑であり、1ヵ所でも間違いがあると多くの修正時間が必要です。しかし、給与自動計算機能があれば、数値を入力するだけで自動計算し、ケアレスミスを防止できます。

改定プロセスをシステム化していないから

給与計算をする際に、従業員の雇用形態は常に一定とは限りません。当然ですが、パートから正社員に登用されたり、逆に正社員がアルバイトに戻ったりと変動します。基本給や手当など毎月固定で支払われる報酬額に大きく変動がある場合は、社会保険料の見直しを行うために、標準報酬月額の変更手続きが必要です。しかし、このような変更プロセスをシステム化していないと、ついつい担当者同士の認識に相違が生まれてしまうことがあります。

手作業で業務を進めているから

給与計算は、打刻カードから勤怠情報を確認し、労働時間を計算するなど煩雑な作業が非常に多くあります。しかし、これらをすべて手作業で行っていると人間である以上、必ず見落としや転記ミスが生じてしまうものです。すべて手作業にするのではなく、紙ベースからシステムベースで作業を行う仕組み作りが重要です。できる限り手作業を少なくし、ケアレスミスを防いでいきましょう。

複数のシステムを利用しているから

従業員の打刻カードは紙ベースで、勤怠情報の管理や各種手当のチェックはExcelで、給与計算はシステムで行うなど、複数のシステムをまたいで使用しているケースがあります。もちろんいけないことではありませんが、複数のシステムをまたいでしまうと、どうしても作業が煩雑になり、転記ミスや確認漏れが生じる可能性もあります。ミスを防ぐためには、できる限り複数のシステムを使用せず、少ないステップで作業を完了する設計が重要です。
自動処理による給与計算であれば、一つのオンラインサービスで従業員の情報を一元管理できるため、このようなミスを防ぐことができます。

総務における給与計算で注意すべきポイント

なお給与計算業務では、事前に気をつけるべきポイントがいくつかあります。ここでは、特に重要な4つのポイントを解説します。

賃金支払の5原則を遵守する

従業員の賃金について、労働基準法第24条では「賃金支払の5原則」が定められています。賃金支払の5原則には、「賃金は、通貨で直接労働者に全額支払うこと」「賃金は、毎月1回以上、一定の期日で支払うこと」などのルールが表記されています。

【賃金支払の5原則】

  • 通貨で支払う
  • 直接労働者に支払う
  • 全額を支払う
  • 毎月1回以上支払う
  • 一定期日を定めて支払う

しかし、実際には企業の多くが現金で賃金を支払うのではなく、口座振込で対応していますよね。そのような場合は、以下に該当するケースにおいて労使協約や本人の同意があれば、現金以外の支払いも可能です。

  • 口座振込
  • 通勤手当の現物支給
  • 退職金を小切手で支払う

参考:労働基準法 第二十四条|e-GOV

固定給与と非固定給与にミスがないか確認する

固定給与とは、毎月決まった額の給与のことで、勤務時間や個人の成果に関係なく支払われます。一方、非固定給与とは、残業手当・休日手当・インセンティブなど従業員の働き方次第で変動する給与のことです。非固定給与は、従業員の勤怠状況や成果によって変動してしまう性質があり、都度、計算にミスはないか確認する必要があります。

残業代の割増や時間外労働に注意して計算する

労働基準法の取り決めにより、使用者は原則として、1日に8時間・週40時間を超えて労働させてはいけない法定労働時間が定められています。これを超える残業については、残業手当を25%、休日出勤手当を35%、割増賃金として加算しなければなりません。残業や休日出勤の有無は、従業員の働き方によって異なりますから、計算ミスが発生しないよう十分な注意が必要です。

割増賃金の端数処理に注意する

さきほどご説明した残業代や時間外労働にも関係しますが、労働基準法では割増賃金の端数処理についても、以下の通り明確に定められています。

  • 1時間あたりの割増賃金に円未満の端数が生じる場合は、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上1円未満の端数を1円に切り上げる
  • 1ヵ月間における割増賃金の総額に1円未満の端数が生じる場合は、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上1円未満の端数を1円に切り上げる

給与計算を行う担当者の独断で端数処理をしてしまうと、法律違反に該当してしまう場合もありますので注意が必要です。
参考:残業手当等の端数処理はどうしたらよいか|厚生労働省 東京労働局

給与計算のミスを低減し作業負荷を軽減するオンライン給与自動計算とは

「給与計算をすべて手作業で進めている」「複数のシステムをまたいで給与計算しているため業務が煩雑」など、給与計算に関するお悩みはありませんか?給与計算は、労働契約を結ぶ従業員に対して給与を支払う重要な業務の一つです。それだけにミスは許されず、担当者の多くは大きな責任とプレッシャーを感じているのではないでしょうか。
給与計算における作業負荷を軽減するために、弊社では戦略総務を目指して脱バックオフィスを推進するクラウドサービス「Fleeksorm(フリークソーム)」を提供しています。Fleeksormを導入することで、給与計算をオンラインで自動化できる機能がついており、これまで以上に作業負荷を軽減できる可能性があります。

まとめ|総務業務における給与計算の負担を軽減しよう

給与計算は単に、従業員の勤怠状況を把握すればよいのではなく、社会保険料や税金などの計算が求められ、労務や税務の知識が必要です。だれにでもできる仕事ではありませんが、一方でペーパーレス化やデジタル化が一向に進まないなどの悩みも多く聞かれています。
ぜひこの機会に総務業務の負荷を軽減するためにも、給与自動計算機能を取り入れてみてはいかがでしょうか。